EVの弱点
Vの弱点は、”走行距離が短いこと”だけではありません。
電池の性能は、日々向上していて、容量は年を追うごとに増加し、これを動力に変える効率、いわゆる”電費”も向上しているので、一回の充電で走れる距離はどんどん長くなっています。
1回の充電で現在の自動車と同等の5~600kmぐらい走れば、ガソリン車と変わらないのではないか?と思いますか?
日産リーフは、”一回の充電で400km走る”とされていますが、果たして、それで十分なのか?
私は大いに疑問を感じます。
なにがマズイかというと、”充電にかかる時間”です。
充電にかかる時間が長すぎる
自宅で充電する場合は、何時間かかっても、まぁ、問題ないでしょう。
問題は外出先です。
日産のホームページを見ると、リーフの充電にかかる時間は、急速充電機を使っても、約40分です。
「40分ぐらい待てばよい」「買い物でも、休憩でもできるじゃないか」と言う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、40分待っても、充電できる容量は、フル充電の80%です。
詳細は⇒ 日産リーフのホームページ
これは知らない方が多いのですが、80%までは、”急速に充電できる”のですが、80%を100%にするには ものすごく時間がかかるのです。
これは、スマホを充電するときに感じている方もいらっしゃると思います。
容量の小さいスマホでも100%充電は難儀なのに、巨大な電池を積むEVを100%充電するのは、相当にハードルが高いのです。
確かに、「現状では40分待てばよい、80%でも300km以上走るじゃないか!」という方もいらっしゃるでしょう。
しかし、これは現状だから言えることです。
将来、これは大問題になってくると思われます。
容量が大きくなればなるほど時間がかかる充電
EVに期待されている方は、より容量の大きい電池の登場を心待ちにしているかと思いますが、電池は容量を大きくすればするほど充電に時間がかかるという欠点を持っています。
これは相当大きな欠点です。
ガソリンタンクを大きくするのとはわけが違います。
時間をかければ済む問題ではないのです。
実は、充電機に送電するインフラに重大な欠陥があるのです。
充電機がかかえる問題
充電に時間がかかるという事は、充電している間は充電機を独占していることになります。
現在は、充電機は十分に設置されているし、今後増えていくと思われますので、しばらくは”待てばよい”という状況が続くでしょう。
しかし、航続距離が長いEVが次々に登場すると、充電機を長い間占領する車が増えてくることになります。
充電機を増設しても、順番待ちの状態は増えるでしょうね。
しかも、充電機増設にも壁があります。
送電容量が足りない
現在の電力会社の状況を考えてみてください。
”暑い”と言えば節電、”寒い”となっても節電、です。
原子力が止まっている今、慢性的に電力不足です。
これでEVがどんどん普及してガソリンから変わってくるとして、電力需要に対応できるのか、相当心配になります。
さらにインフラの問題があります。
急速充電が一気に稼動すると、そこに大量の電気を送らなければいけません。
効率よく大量の電力を送るには高圧の電気が必要になりますが、これに対応する送電線は、当然現状において必要十分な量しか設置されていません。
仮に”原子力が安全になりました”などのアナウンスがあり、十分な発電能力を確保できたとしても、”電気を送る”手段に問題があるのです。
高圧電線を一気に建設するのは、現実的ではありません。
EVはエコか?
もう一つ、重要な問題があります。
果たして、EVは本当にエコなんだろうか?
という問題です。
EVがエコだといわれるゆえんは、二酸化炭素(CO2)を出さないところです。
確かに、EV自体は電池とモーターで動くので、ガソリンを使う車のようには二酸化炭素を出しません。
しかし、EVを動かすための電気はどこから来たのでしょう?
もちろん電力会社が発電した電気、ですよね。
ご存知のように、原発事故以来、原子力発電が止まっていますから、電力会社は発電のほとんどを火力発電に依存しています。
その割合は、LNG、石炭と石油を合わせた火力発電で、実に80%以上と言われています。
風力や太陽電池などの新電力があるじゃないか?
こちらは、まだまだ発展途上中で、5%未満しか使われていない上、風力も太陽電池も、建設ラッシュによる環境破壊が問題になっています。
とても、”エコとは言えない”状況です。
送電効率にも問題がある
ガソリン車の場合、ガソリンを積んで走るので、ガソリンで発生するエネルギーをその場で使うことができます。
しかし、EVの場合は、どこか遠くで発生させたエネルギーを車に送り、それを使います。
この”エネルギーを送る”という行程(送電)にも問題があります。
大雑把に言えば、
発電 ⇒ 高圧に変電送電 ⇒ 低圧に変電 ⇒一般に電力供給
こういう行程になるので、変電効率が悪ければエネルギーのロスがあり、さらに、長距離を高圧で送電すれば、熱や電波によるエネルギーロスが発生します。
電力の無駄遣いですね。
結局EVはどうなのか?
私は電気とモーターで走るEVが普及すること自体は良いことだと思うし、期待もしています。
しかし、現状を見ると、EVそのものにはスポットライトが当たっているものの、元々の電力についての議論が置き去りにされているような気がしてなりません。
本格的にEVを普及させるなら、電力供給について、もっと真剣に取り組むべきです。
また、こういったEVの影の部分をもっと表に出すべきです。
EVの欠点は”知っている人は知っている”という状況は非常に危ういと思います。
問題を公にし、議論を重ねていくことが求められています。